、いい物を持ってきたぞ!」
「へ?」

にこにこと花でも飛ばしそうな笑顔で差し出されたケージを、は若干困惑した表情で見つめた。
いい物と言われても、スネークが持ってくるものだから油断は出来ない。ましてやそれがケージに入っているのだからなおさらだ。

「どうしたんだ?遠慮なんかしなくていいぞ」

受け取ろうとしないにしびれを切らしたのか、スネークはそのケージを半ば強引にに手渡した。
別に遠慮なんかしてない、と言おうとしたものの、何かを期待するような目で見られてしまうと、その言葉を口にするのは憚られる。
これではまるで蛇というより、しとめた獲物を褒めてもらおうと持ってくる猫じゃないか、というツッコミを心の中にしまって、は恐る恐るケージの蓋を開けた。

「……」

中に入っているものを数秒見つめ、そのままゆっくりと蓋を閉める。

「どうだ、いい物だろう?」
「スネーク、これの一体どこがいい物なのか私にも分かるように教えてくれる?」
「いい物じゃないか!」
「だから、このカエルのどこがいい物なのよ!」

スネークの持ってきたケージの中には、大きなカエルがでんと居座っていたのだった。
両生類が大好きという人にとっては確かにいい物なのかもしれないが、あいにくにそんな趣味は無い。

「このカエルはアマガエルと違って食ったら美味いんだぞ!」
「食べるの!?このカエルを!?」
「ああ、そのつもりでもってきたんだが」

目を丸くして驚いているを見て、スネークは不思議そうに首をかしげた。

「食べたことないのか?」
「あるわけないじゃん。だってカエルだよ!?」
「ニッポンでは普通に食べていると聞いたぞ」
「聞いたって誰に」
「パラメディック」
「………はぁ」

スネークの返答を聞いたは、息を大きく吐くと、何回か会ったことのあるその顔を思い浮かべた。
ニッポンが好きだと公言しているだけあって彼女のニッポンに対する(多少偏った)知識には時々驚かされることもあるが、それがどこか間違っているというのも珍しくない。
後でパラメディックにも訂正しておこうと決心をしながら、は口を開いた。

「あのね、そりゃ人によっては食べる人もいるかもしれないけど、それが決して日本人のスタンダードってわけではないから」
「何!?」
「少なくとも私の周りでは食べる習慣はない」
「…そうか」

喜んでもらえると思っていたのだろうか、の言葉を聞いたスネークは目に見えて落ち込んでしまう。
がっくりと肩を落としたその姿がどこか不憫で、は思わず声をかけていた。

「スネーク?」
「…なんだ?」
「食べたことはないけど、食べれないって物でも無いんだし、折角持ってきてもらったものを捨てるのもなんか悪いから、その、食べてみる…よ?」
「本当か!?」
「あー…うん。でも私一人で食べるのはなんか嫌だからスネークも一緒に食べよう」
「カエルは一人分しかないぞ?」
「半分こすればいいじゃない」
「…そうだな!」

さっきと打って変わって、再び明るい表情になったスネークに苦笑を漏らしつつ、は再びケージの蓋を開けた。






(こうしてみるとカエルも案外かわいいかもしれない)(まぁ、今から食べられるわけだけど)



「で、これどうやって食べるの?」
「生だ」
「生ぁ!?」