「」
「ん、どしたの、セイロ…」
後ろから、突然呼びかけられて、振り返ったときにはなぜか私のからだはセイロンの腕の中に入っていた。
セ、セイロンの行動が突拍子も無いことは随分前から知っていたけど、それでも限度って物が…。
なにしろここは町の中、今さっきから通行人の目が痛い。
(あ、ちっちゃい子がすっごい凝視してる!見世物じゃないっつの!コラ!)
「ちょ、セイロン……」
「どうした?」
「どうしたじゃなくて、放して」
「うむ」
以外にあっさりと、セイロンは私のからだを開放してくれた。
いきなり抱きつかれたせいで火照った身体を手であおいで冷ましながら、抗議をする。
「あのね、セイロン。いくら、その、…こ、恋人、同士だとしてもね、こーゆー街中で抱きつくの、やめてちょーだい」
「なんだ、照れておるのか?」
「照れるとかそーゆー問題じゃなくて…!」
「あっはっはっは、これしきのことで照れるとは、まだまだ子供だな」
「だーかーらー! 照れるとかじゃなくて!(いやちょっとは照れるっていうか恥ずかしかったけど!)」
私がムキになればなるほど、セイロンは面白がっていくだけで。
こーゆーときセイロンの暢気さっていうかある意味自己中な性格というか常識知らず的なところが恨めしく感じる。
下唇を突き出しながらそっぽを向くと、セイロンが苦笑していた。
「ほら、拗ねるでない」
「別に拗ねてないです」
我ながら、可愛くない言い方をしてしまったな、といった後で後悔した。
ちらりとセイロンを見ると、それでもセイロンは苦笑したままで、なんだか自分がすごく子供っぽく思えてきて悔しくなる。
「突然抱きついたことは、悪いと思っている」
「そりゃ、思ってもらわないと、困りますけど」
「少し、見せ付けてやろうと思ってな」
「見せつけ……誰に? 何を?」
「気付いておらぬのか?」
「だから、何に?」
意味が分からず聞き返すと、本当に気付いてないのか…とセイロンが呟いた。
だから、なんのことなのかさっぱりなんですけど!
なんだか私だけ置いてかれてる感じで、また下唇が突き出はじめて、ほんとに私可愛くないなーと思っていた矢先。
また、セイロンに抱きしめられた。(しかも今度は、さっきよりも、強く)
「セッ、セイロン!!!」
「実はそこそこもてているであろう?」
「は!? そんなことないよ。ラブレターだって、数えるぐらいしか貰ったこと、ないし(ていうか、何を突然)」
「さっきから、他の男共がちらちら見ているのが気になってな。見せ付けてやるのが一番手っ取りばやいと思ったのだが」
「なっ…!!」
「。愛しているぞ」
最高気温の時間帯はとうに過ぎた
(というのに、この熱は一体誰のせい?)
驚きすぎて、思わずセイロンを突き飛ばしてしまったのは、まぁ、ご愛嬌ということで。