ピピピピピ、と少し五月蝿いくらいの電子音がベッドサイドの目覚まし時計から流れ始めた。
数秒後、布団からぬっと伸びた手が手探りでその音を止め、再び布団の中へと舞い戻る。
その一連の流れを眺めていたエルフは、無言で布団の塊に近付くとそれをいっきに剥ぎ取った。
「ぎゃ!」と短い悲鳴を上げ、寝ぼけ顔のは少しでも表面積を減らそうと丸まる。
いっこうに起きようとしないに、エルフはとうとう痺れを切らしてしまった。
「マスター!もう起きないといけないんだろう!」
「いやいやいや無理無理だって寒いもん」
「寒いと思うから寒いんだ」
「そんなこと言っても寒いものは寒い。エルフ布団返して」
「駄目だ」
「エールーフー」と甘えた声を出すに、エルフの意志がぐらりと揺らぐ。
けれどもここで渡してしまってはのためにはならないと、エルフは心を鬼にした。
「ほら、早く起きろ」
「いーやーむーりー」
「無理じゃない!」
あくまで駄々をこねつづけるつもりのに対して、エルフは「仕方ないな…」と呟くと実力行使へ踏み出した。
亀のように丸まったの両脇の下に器用に手を入れると、そのまま身体を持ち上げる。
突然抱きかかえられ慌てたは、抵抗するかのようにエルフの手の中にじたばたともがくが、エルフは全く動じる様子はない。
「ちょ、エルフ!」
「どうしたんだ、マスター」
「どうしたじゃなくって!おろしてよ」
「下ろしたらまた丸まるんだろう?それならこのまま洗面所まで連れて行ったほうがいい」
「わ、分かった。ちゃんと起きるから!だから下ろして!」
その言葉を聴いて、エルフはようやくを下ろした。
眠気はすっかり吹き飛んでしまったものの、朝から心臓に悪い刺激を受けた、とは不満を漏らす。
「もうちょっと起こし方ってものを考えてくれてもいいんじゃないかと思うんだけど」
「普通に起こしたってマスターは起きないだろ」
「…それはそうだけど」
自分でも自覚があるだけに反論することすら出来ず、はぐっと黙り込む。
そんなの様子を見ながら、エルフはさも名案とでも言うように「こんなにすぐに起きてくれるなら、次からは最初からこうすることにするか」と呟いた。
「え、いや、ちょっと待ってそれはやめて」
「けど、これが一番手っ取り早いだろう」
「いやいやいや、大丈夫今度からはちゃんと自分で起きる!」
毎朝こんなことをされては堪らない、と全力で拒否するの態度に首を傾げるエルフ。
自分が焦っている理由に全く気付いていないエルフに、は心の中で盛大に頭を抱えるのだった。
真冬限定の眠り姫
(目覚めさせる方法が一つだけとは限らない)
「あれが駄目ならくすぐって起こすのはどうだ?」
「…ほんと自分で起きるから勘弁して……」