元々はニ心同体だったくせに、そうとは思えないほどナムとマリクはよく喧嘩をする。
喧嘩と言ってもマリクが子供である以上、暴力は無しなので傍から見ればじゃれあっているようなものだ。
それでも本人達はいたって大真面目なのだから、見ているとしては楽しくてたまらない。
「だからあれはがボクのために買ってきたんだぞ!」
「しょんなのオレが知ったことじゃない」
「あのなぁ!」
今日も二人は、冷蔵庫のプリンを勝手に食べたとか食べないとかでぎゃあぎゃあと騒いでいる。
そういえば、昨日マリクがプリンを食べていたような気がする。
と、何も考えずにが口をすべらしてしまったせいで、口喧嘩は現在泥沼に発展していた。
自分で事態を大きくしたわりに、は冷蔵庫から自分の分のゼリーを取り出すと、我関せずといった様子で自分だけ食べ始める。
喧嘩する青年と幼児とそれをゼリーを食べながら見ている女、
というシュールな光景が繰り広げられているが、残念ながら突っ込みを入れるものは誰も居ない。
「二人ってさぁ、」
しばらく二人の喧嘩を傍観していたが、ふと口を開いた。
「仲良いよね」
「「はぁ!?」」
ナムとマリクの声が見事に重なる。
「なんでボクがこいつなんかと!」
「きしゃまには、これが仲良く見えるのかねぇ」
ナムは納得いかないといったように、マリクはどこか呆れたようにそう言う。
「だって二人とも遊んでるようにしか見えないんだけど」
「ボクらは真剣なんだよ、」
「主人格しゃまの言うとおりだじぇ」
妙な所で結託しはじめる二人に少々押され気味だが、が同意を求めるように反論した。
「ほら、喧嘩するほど仲が良いっていうし」
「なんだい、それ」
日本語は堪能でも、流石にことわざなどは知らないのだろう、ナムが不思議そうな顔をして聞き返す。
「仲が良くない人とはそもそも喧嘩すらしないって事だよ」
そう告げると、二人はきょとんとした表情をに向けた。
二人の行動が全く同じで、はまたくすくすと笑う。
そのことにナムは顔を真っ赤にさせ、マリクは不機嫌そうに顔を背けた。
ひとしきり笑った後で、が「よいしょ」と立ち上がる。
「どうしたんだい?」
というナムの問いに、「しょうがないからプリン買ってくるよ」返すと、
ナムは慌てたように「それなら、僕が行くから!」と立ち上がった。
「それじゃ一緒に行こうか」
「本当かい!?」
「うん」
の申し出に嬉しそうに破顔するナム。
そんなナムを見てまた笑いながら、は未だにあらぬ方向を見ているマリクに手を差し出した。
「?」
「マリクも行こう?」
にこりと笑ってが言うと、マリクは一瞬だけ躊躇うそぶりを見せる。
「ほら、早く」
「…早くしないと、お前の分は買わないぞ」
とナム、二人に急かされて、さも渋々といった様子でマリクも立つ。
それでも、心なしその頬が綻んでいるのを見て、とナムは顔を見合わせ笑った。
突き詰めればいつだって変わらないこたえ