「人識ってさぁ、幾つだっけ?」
「あ? どーしたんだよいきなり」
「いやさ、いーから」
「19だけど」
「あ、やっぱいっくんと同じなんだ」

ふむふむと納得したかのように、は頷いた。
質問の意図はいまいち掴めなかったものの、何故だかは満足そうなので、人識は質問に対しての追求をやめる。
そして、そのまま数分ほど、何をするでも泣くのんびりまったりとしていたのだが、
ふと、が今まで走らせていたシャーペンを止め、人識を見た。

「あのさぁ、人識ってさ」
「何だよ?」
「年齢の割に、背、低いよね」

唐突に浴びせられた何の悪気もない、「ただそう思ったからそう言っただけ」というの言葉に、人識は一瞬にして凍りつく。

「おーい、人識?」
「……」
「え、あれ? もしかしてもしかしなくても私地雷踏んじゃった?」

微動だにしない人識を不審に思ったが、目の前で手を振ったりしてみるが、人識は全く反応しない。
そこになってようやく、は自分が相手のコンプレックスを直撃した。ということに気が付いた。

「えーっと……ほら、元気だして!」
「…」
「大丈夫だよ、身長なんてすぐ伸びるって」
「…」
「んー…っと、ていうかね、私はちっちゃい方が可愛いと思うけどなー…」

そうは言ってみるものの、人識は全く何の反応もしめさない。
というか、自分よりも身長の高いに、背の低いことをフォローされたとしてもあまり嬉しくないというのが本音だ。
因みにの身長は173cmだったりする。
背の高いが背の低い人識をフォローする姿と言うのはなかなかに滑稽だ。

「やっぱ、背の高い奴の方がいいよな…」
「え?」
「芸能人とかで、背の低い奴と高い奴だったら、高い奴の方がいいだろ?」
「え、まぁ、どっちかって言われればそうだけど…」

言ってから、は、はっ、と人識を見る。
人識からはどんよりとしたオーラが出ていて、何かブツブツと呟いている。(正直怖い)

「ひ、人識…?」

声をかけてみるものの、またもや反応はない。

「あ、あのね、人識っ!!」

意を決したかのように、は今までより大きな声で人識を呼んだ。
その声に、少し驚いたように、人識はを見る。

「そりゃ、私は、背の高い人も好きだけど、
でも、そんなのよりも、今の人識が、よっぽど好き…だから。えっと…その…元気だして?」
「……」
「ていうか、ゴメン。私が余計なこと言ったばっかりに…」
「…気にすんな。勝手に落ち込んだのは俺だしな」

のあまりの落ち込みように、人識もどうやら機嫌を直したようだった。
そんな人識の様子にほっとしつつも、ははにかみながら、

「うん。 えっとね、人識…あのね? 大好きだよ?」

と呟いた。